会社の Slack で紹介されていた本。チームが目標に向かってリズムよく進んでいくための方法について興味・関心があるので読んでみた。
本書は、前半部分が小説パート、後半部分が OKR 自体の解説パート、の 2 部構成になっている。
小説パートは、やるべきことにフォーカスできず、問題山済みのスタートアップが、OKR を導入することで、なんとなくうまくいった感じになる、サクセスストーリー(?)的な内容。
OKR 自体の説明やユースケースについては、元からある程度知っていたり、昔以下のようなワークショップにも参加したことがあったので、すんなり理解することができた。前段の小説の存在も、スムーズな理解をかなり助けてくれていたと思う。
プロダクトオーナーのための OKR/KPI ワークショップ #0【2017/11/06(月)】
ここ数年の自分の個人的な課題のひとつに、「チームをなんとなくうまくいっているような状態にすることはできるけど、チームのアウトプットの価値を最大化できているかというとできてない。そのための方法もあんまり知らない。」というのがある。これができない自分は、スタートアップの環境では置物になってしまうと思っていて、まあ危機感を感じている。
そんな中で、濱口秀司さんのインタビュー記事を読んで、学んだことを以下の記事にまとめてみたりしつつ、他にも何かいい方法がないか探しているところだった。
OKR では、「KR(Key Results)」として、達成できるかどうかが五分五分のストレッチゴールを設定することが前提になっている。本書からそのまま引用するけど、
OKR のような手法は、最も可能性の高い結果ではなく、可能なかぎり最高の結果を達成する手助けになる。
と書かれている。甘すぎず、厳しすぎるわけでもない、チームが学び、継続的に成長し続けるための、適切なストレッチゴールを設定する仕組み。最初に目標を決めるときの難易度設定も、定期的な振り返りながら、自分たちの位置を確認し、次のアクションをより良いものに変えていくのも、感覚でやっていると結構間違う難しいことだと実感している。それを今よりもうまくやるための道標みたいなものとして働いてくれるところに、すごく価値を感じた。
アウトプットの価値を最大化するための手段の一つとして、うまく活用できれば、自分の持ってる課題感も、少しは解決の方向に向かいそうな気がする。
詳細は割愛するけど(自分で読んでください)他にも、チームが目的にフォーカスし続けるため方法論が、本書では紹介されている。OKR と組み合わせることで、よりチームが目的に向かってリズムよく進んでいけるようになる。
本書に書かれていること以外にも、これまで学んだこと / まだ学んでいないこと含めて、価値を最大化する / 最高の結果を達成するための方法論ってきっとたくさんあって、そのうちの1つの手段を見つけたって感じ。武器庫がひとつ充実した。
かなり枝葉の部分へのツッコミになってしまい、イチャモンっぽいのでアレなんだけど、前半パートの小説部分で腑に落ちなかった部分があるので、一応書いておこうと思う。結論はない。発散して終わりそう。(ネタバレになる気もするので、嫌な人は読まないほうがいい)
小説を読んで自分のなかに腑に落ちなかったのは、『「OKR の O (= Objectives) 以外はやらない」で本当にいいんですか?』ということ。
小説は、とあるスタートアップが OKR を導入した結果うまくいった感じになる。というストーリーを書いているんだけど、その中で大きく2つのものを「捨てる / やめる」判断をしている。
- 社長が OKR の O に関係のない活動(とはいえ会社のビジョンには関係があり、想いもある)に力を注いでた。そういった関係のない活動はやらない / やめさせるという判断。
- 会社がピボットする前のビジョンに共感した入社したエンジニアが、ピボットした後にダークサイドに落ちた(CEO の悪口を流したり、コードをあえて難しく書いたり)。そのエンジニアを解雇するという判断。
そういう判断をして、スタートアップが抱えていた問題は解決され、うまくいったように見えて、そこで話がおわる。でもこれって本当にうまくいったって言えるんだろうか。捨てたり、やめたりしないほうが、さらに良い結果をもたらした、なんてことはなかったんだろうか。
小説だし、仮にこれが現実だったとしても、未来のことは誰にもわからないし、答えなんてないんだろうけど。
最近「本当にあるんだなぁ」って気づいたのが、「え、なんで今それやってるんですか?それって今プロダクトやチームの目標と関係のないことですよね」と言いたくなっちゃうような取り組みが、しばらくした後に予想もしてなかった「非連続な成長」をプロダクトに与えることもあるんだっていうこと。
非連続な成長っていうのは連続的な成長とちがって、階段を何段も飛ばして登るような感じのやつをイメージしてる。そして、その非連続な成長が他のプロダクトと比較したときの差分になる。
そういうことが起きる可能性は高くない。でも、可能性はゼロではないことは確か。だから自分は、そういった非連続な成長のタネみたいなものは大事に守り育てつつ、チームが目標にもフォーカスできるやり方を知りたい / 見つけたい / つくってみたいと思っている。
本書で紹介されている方法論にも、OKR のモニタリングと並行して「健全性指標」についてもモニタリングすべきだと書かれている。 OKR の達成を推進するにあたって、相反しかねない他の大事な部分(本書ではわかりやすく、チームの健全性(健康的な意味で)を例として挙げていた)を犠牲にしていないかも合わせてチェックしていきましょうということ。
健全性指標に「非連続な成長のタネが守られていること・成長していること」という項目を作ればいいのかもしれない。それが守られているかどうかは、どうすれば測れるんだろう。「そのための時間に 20%の時間をつかえているかどうか」とか?いや違う気がする。
四半期ごとの OKR じゃなくて、1 年単位の OKR で表現すればいいのかな?いやでも、長期的な視点をもってしても予測できないから「非連続」って言うんじゃないのかな?
単純に「非連続な成長を生み出す」という O を掲げたチームを作ればいいのか?ほんとうに?
どうすればいんだろう。
すごく好きな本がある。
ピクサー流 創造するちから――小さな可能性から、大きな価値を生み出す方法
この本にはすごく学びになるいろんなことが書かれている。その中で自分が一番印象に残っているのは「人は自分の知らないところで成功して、自分の知らないところで失敗する」というメッセージ(うろ覚え)。要は、**測定できたり、見えてるもの以外の要因で、物事は成功したり、失敗したりするんだよ、**っていうこと。
引用したほうが早いので引用してみる。
「測定できないものは管理できない」。ビジネスや教育の現場でよくそう言われ、信じられている。とんでもない。どれだけのものが見えずに隠れているか、それに気づいていない人にしか言えない言葉だ。人が管理するものの大部分は、測定できない。そこに気づかないと予期せぬ結果を招く。データが物事の全容を表すと信じている人は、現れていないものを見過ごす。私が勧めるアプローチは、測定できるものは測定し、その結果を評価し、大半のことは測定できないと理解する。そうしてたまに一歩引いたところから自分のやり方を見直すことだ。
3 年前くらいにこれを読んだ時にすごく衝撃を受けた。見えてるものしか見えてなかった。見えてるものがうまく行ったら、すべてがうまく行ったような気になってた。でも、それ以外にも意識しないといけないものがあって、そうじゃないと用意に局所最適解に落ち着いちゃうってことに気がつけた。その後、少し自分の行動が変わった。
まとめると、
- 測定できるものは測定し、その結果を評価する
- 大半のことは測定できないと理解して、一歩引いたところから自分のやり方を見直す
まずは 1 をできるようなることが最初のステップ。今回でいうと「OKR をしっかりやる」とかが手段になる。そのあと 2 をいいバランスで組み込んでいくのが次のステップ。で、自分はこの 2 の部分が非連続な成長 / 圧倒的な価値を生み出すためにいちばん重要なことなんじゃないかと思っている。
ただし、 2 のためのいいやり方は知らないし、わかってない。だから探している。ただ、測定でいない以上、具体的な方法論はなくて、直感的に行動するしかないのかもしれない。
本書のスコープじゃないのは理解しているけど、自分が重要だと思っている 2 の可能性については触れられず、サクセスストーリーっぽく小説が終わってしまったのことが、腑に落ちず、もやもやしてしまった原因なのかもしれない。ほぼイチャモンだけど、自分が感じた違和感は大事にしたいと思って書いた。
というわけで「OKR」を読んだ人は、あわせて「ピクサー流 創造するちから」も読んでみるといいと思う。何か学べることがあると思う。
発散しまくったけど、おわり。