「a or b」ではなく「a and b」を模索する
仕事をしていると、「a or b」を選択する場面に直面することが多い。
- スピードを取るか、品質を取るか
- 全体を見るか、個人に向き合うか
- 責任を果たすか、やりたいことをやるか
- など
どちらかを選ぶと、何かを失う(=トレードオフが発生する)ことも多い。こういう場面で、自分は「a or b」ではなく「a and b」を選択できないか、つまり両方を取れる方法がないか模索するように心がけている。
きっかけ
心がけるようになったきっかけがいくつかある。
一つは、pmconf 2019 に参加したときに、LINE二木さんの「LINEにおけるお金とユーザーのジレンマ」というセッションを聞いたとき。
ニュートンの言葉に「何らかの不調和(ジレンマ)が存在する場合、それは我々の認識のどこかが間違っている可能性を示唆している」とあります。
ジレンマは表面的には対立項でも、Whyを二回繰り返すと基本的に同じ目的に行き着きます。実はみんな同じ方向を向いているのです。
この話にすごく共感した。それ以来、意見が対立している場面に出くわした時に、「どちらが正しいか」ではなく「共通の目的は何か」を探すようになった。
もう一つは、『決定力! 正解を導く4つのプロセス』という書籍を読んだこと。意思決定の最大の罠は「視野が狭まること」であり、目の前の選択肢に囚われずに、別の可能性がないか広げてみよう、という趣旨のメッセージが強く印象に残った。
それ以来、意思決定の際に「今は認識できていないけど、より正解に近づくための選択肢が他にも存在しているはずだ」と考えるようになった。
対立は「全体が見えていない」サイン
これらの考えが自分の中にすんなり入ってきたのは、「自分が見えているものが全てじゃない」という前提となるポリシーのようなものが、自分の中にあるからだと思う。
以前、「自分が見えているものが全てじゃない、あるいは見えてないものにも価値がある」という記事でも書いたが、自分は仕事の中で「自分が今見えているものが全てじゃない。知らないことや、気づいてないこと、理解できてないことが必ずあるはずだ」と意識するようにしている。
これは複数の意見が対立している状況に対しても言える。片方の意見の正しさを主張する人が、全てが見えているわけではないし、逆もそう。誰しもが、物事の一部しか見えていないことがある。見えている世界の中では正しいことも、より広い世界では正しくないことはよくある。
その前提に立つと、対立の見え方が変わる。意思決定の際に答えるべき問いも、「どちらが正しいか」ではなく、「それぞれが見えている部分を合わせたら、もっと本質に近づけるのではないか」という問いに変わる。対立は、まだ全体が見えていないことを教えてくれるサインなのだと思う。
仕事で「a and b」を模索する
抽象的な話ばかりだとふわっとしてしまうので、自分が実際に「a and b」を模索している(した)場面をいくつか振り返ってみる。
スピードと全体最適
チームの開発体制を変えて、各チームが独立してスピード感を持って動ける構造をつくろうとしている。狙いは意思決定やアウトカムがうまれるスピードを上げること。でも一方で、チームをまたいだ方向性の統一や全体最適が難しくなるリスクも見えている。
スピード or 全体最適。それぞれの立場から見える世界では、どちらも正しい。でもこの二つは本当にトレードオフなのか。今模索しているのは、「意思決定がチームの中で完結している状態」をつくることでスピードと全体最適を両立できないか、ということ。各チームが自律的に判断できる情報と権限を持っていれば、スピードと全体の方向性は両立できるはず。
俯瞰と個人への配慮
マネジメントの役割を担うようになると、「木ではなく森を見る」ことを求められる機会が増える。組織全体を俯瞰して、方向性やリソース配分、優先順位などを確認したり。でもその一方で、一人ひとりのメンバーが何を考えていて、何に困っているかに向き合うことも同じくらい大事だ。
俯瞰 or 個人への配慮。森を見れば木が、木に寄り添えば森が見えづらくなる。でもこれも、「どちらか」ではないはず。一人ひとりの行動や成長、持ち合わせたポテンシャルや創造性が最大限発揮され、組織全体の成果に繋がっている状態をつくれれば、俯瞰と個人への配慮は矛盾しない。一人ひとりに向き合うことが、そのまま全体を前に進めることになる。そういう構造をつくることが、両立の鍵になるはず。
責任とやりたいこと
少し前にキャリアの岐路に立った時に、自分の中に二つの気持ちがあることに気づいた。会社や事業に対する責任を果たしたい自分と、新しいこと(=自分がやりたいこと)に挑戦したい自分。見えている世界が違う二人の自分がいるような感覚だった。どちらかを選ばなきゃいけないと思い込んでいた時期があったけれど、コーチングの場で話しているうちに、それぞれを両立できる道を模索すればいいんだと気づけた。
責任 or 挑戦ではなく、責任 and 挑戦。結果的に、会社や事業に対する責任を果たしながら、その中で新しい挑戦ができる形を模索することにし、今の会社で働いている。最初から二択だと思い込んでいただけで、探してみると道はあった。
「どちらかを選ぶ」の前に
もちろん、本当に「a or b」を選ばなければいけない場面はある。人も時間も有限だから、すべてを同時にやることはできない。
でも、自分の経験上では、最初から「どちらかしか選べない」と思い込んでしまっているケースの方が多い。それは、自分の見えている世界が全てだと思ってしまっているからなのかもしれない。
だから、対立に見える場面に出くわした時は、まず「本当にどちらかしか選べないのか?」と問い直すようにしている。それぞれが見えているものを合わせてみる。共通の目的を探してみる。そうすると、最初よりも選択肢が広がることがある。
「どちらかを選んで決める」ことも大事な仕事。でも「両方を成り立たせる道を模索する」のは、さらに正解に近づく可能性を上げるために必要な、より創造的な仕事だと思う。
自分にはまだ見えていないものがあるはず。そう自分に問いかけることが「a and b」を模索する出発点。これからも、安易に二項対立に落とし込まずに、2つの意見を統合できる道を模索していきたい。
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